リボン家族

自分の好きなもの、主にジャニーズや二次元に関して呟きます。

エヴェレストは何を伝えてくれるのか

エヴェレストは我々に何を伝えてくれるのだろうか。

実はこの記事はもう少し、早く上げるつもりだったのだが、様々な都合で遅くなりまして。
『エヴェレスト〜神々の山嶺〜』は私たちに何を伝えようとしているのか。
それを順を追い考えてみたい。
1.あらすじ
2.鑑賞後の感想
3.山に登る理由
4.物語の背景
 
1.あらすじ
1924年、世界初のエヴェレスト登頂を目指し、頂上付近で姿を消した登山家のジョージ・マロリー。エヴェレスト登山史史上最大の謎の鍵を握る、マロリーと思しき古いコダックを手に入れた写真家の深町誠だが、何者かにカメラを盗まれる。行方を追ううち、深町は孤高の登山家・羽生丈ニに出会う。羽生が狙うのは、エヴェレスト南西壁、前人未到の冬季無酸素単独登山だった。山に賭ける男たちを描いた物語。
山岳小説の金字塔。
 
2.映画鑑賞後の感想
 
  実はこの映画は山岳小説の金字塔が原作である為に、本格的な知識を身につけた登山者の方や原作ファンの方も鑑賞している為に賛否が分かれる映画となっている。
筆者もジャニヲタでも俳優さんファンでもない友人と見に行き、彼女に感想を窺ってみた。     
まず、鑑賞後に面白かったか否かを訊いてみたところ、面白かったと言ってくれたが、私たちの周りのグループ(20代女性)が「深町も足を引っ張ると思うならついて行かなきゃ良かったのに。」との感想を言い合っていた。
この感想は深町が実はエヴェレストに行く為の鍛錬をしていた部分が映画では描かれていない為、突発的に行ってしまった印象が拭えなかったのであろうと推測できる。
また横の男女2人組(40代)は「なんで、あそこまでして山に登るのか」と女性が男性に尋ねていた。
これは山に執着して人生を賭けている人間にしか分からない答えなのかもしれないが、山への執着の凄まじさ、山屋と呼ばれる方々の生き様は感じ取られた為に湧いた疑問かもしれない。
 
友人と私は次の目的地に向かいながら、エヴェレストの感想を話した。
私「なんか、私は良いと思うんだけど、評価が分かれる映画で前半が良くて後半が勿体無いと言われたりしてるみたい。」
友「それは私も感じた。前半が羽生さんの人生をじわじわと追いかけて有名登山家の半生をカメラマンが追うって構成だけど、後半は深町さんのターンになるよね。」
私「うん。深町さんが主人公なのに、羽生さんの半生が濃すぎて羽生さんがでなくなってからの喪失感が凄い。深町も喪失感抱いてるけど私たちも喪失感抱くし、深町さんと羽生さんのストーリーだと捉えてたからね、後半がね。」
友「でも、深町さんが主人公なんだから、物語的にはあれが正解の構成なんだけどね。前半に重要キー詰めすぎたかも。」
私「羽生さんの半生も顔も濃すぎたから、この喪失感が最後まで付き纏うし、原作であった深町さんのモノローグが足りなすぎて深町さんのキャラクターに寄り添えない鑑賞客は評価を良くない方にしてしまう可能性あるね。岸京子への淡い恋慕未満の感情とかも描かれないから、金が必要だと言っているイメージが強すぎる。」
友「実際、登山の費用は凄いからね。確かに、私は深町さんより羽生さんの人生が気になって仕方なかった。ザイルパートナーの真実とか。」
私「景色と俳優さんの演技は良かったよね。」
友「阿部さんと岡田くん、凄いね!」
 
などなど話したのですが、映画のネタバレになるような部分は削ぎ落とした為、感覚で感じていただければ幸いです。
 
 
3.山に登る理由
何故、男たちは山に登るのか。理由がわからないというレビューを見かけた為、その最たるものが書かれた部分を合本版より抜粋しておく。
 
この物語の中には女性に衣食住を頼りながら山に登る男性や、山の為に5歳と7歳の子供、奥さんと別れた男性まで登場する。
 
彼らは、自分の人生を山に賭けてしまった人たちの一例であるし、羽生もエヴェレスト登山史を覆す為に唯一の理解者である女性を日本に置いてシェルパの娘と結婚し現地に残るという人生を選ぶほどに山に賭した登山家である。
 
彼らは何故、山に賭けているのか。
その漠然とした思いが登山をしない人たちの中にはあるのかもしれない。
 
その理由が→合本版の738〜739ページに掲載されているので抜粋してみた。
 
 
学生のうちはそれでいい。しかし卒業をして社会に出れば、いつまで山に登ってるんだという声が、周囲からおこる。山と仕事とどっちが大切なんだ。いいかげんに大人になれ。山にゆくのなら、仕事を持って、休みの日にゆけばいいではないかと。そうではない。
 
 
魂がすりきれるような、登って、下りてきたら、もう、体力も何もかもひとかけらも残らないような、例えば、絵描きが、渾身の力を込めて、キャンバスに絵の具を塗り上げてゆくような、そういうことと対等のそれ以上のもの。
 
 
しかし、ここに、羽生丈ニがいる。未だに、あの、心がひりひりするようなあの場所に、この男はいるのだ。岸壁で、死と向き合わせになった瞬間にしか出会えない、自分の内部に存在する感情。世界との一体感。いや、それは、ただ、言葉でそう思っているだけだ。実際のあの感覚は、どういう言葉にも出来ない。
 
 
あの時、自分は何を目指したのか。岸壁から見上げると、山の頂上なんて見えない。ただ、青い空だけが見える。あの青い空を自分は目指そうとしたのか。頂きよりも、さらに高い場所。天ー
 
 
たぶん、おれたちはきっと、あの時、この地上のどこにもない場所を目指そうとしていたのだろう。
 
  我々が対象物があるからヲタク活動をするように、彼らもまた、山があるから登らなければいけないという焦燥感に駆られてしまうのだ。
羽生の場合は主体が違うのだがそれは映画を見て確認して頂きたい。
山の先、つまり、天=神々の山嶺を目指し、数多の登山家の中に自分の名前を刻みたい、そう考えているのかもしれない。エヴェレストの山嶺に登れるか否かは神々の裁きによるとも作中、言われている。
これは山を生業にできる人にしか、本当の意味で理解できないものだと思う。
 
4.物語の背景
◎タルチョ
物語の中には五色の旗が出てくる。様々なエヴェレストの試写会イベントでも、この五色の旗に、参加者が願い事を書き入れたと思うが、このタルチョとはなんなのか。
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タルチョとはチベットの五色の祈祷旗であり、五色の順番は青・白・赤・緑・黄の順に決まっており、それぞれが天・風・火・水・地と即ち五大を表現する。
タルチョ、タルチョク、マニ旗、ルンタ(風馬旗)とも言われ、本来の意味は仏法が風に乗って広がるよう願いが込められている。
他に願い事や六字大明呪、四神(虎、麒麟、鳳凰、龍)など描かれている。
ウィキペディア参照)
 
私も新宿紀伊國屋書店本店さんのタルチョイベントに参加させてもらった。
 
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私はV6応援宣言と書いてきた訳ですが、皆様も願い事を丁寧に書いたのだろうと想像できる。
 
 
◎ネパール大地震
現地時間2015年4月25日11時56分にネパールの首都カトマンズ北西77キロ付近、ガンダギ県ゴルカ郡サウラパニの深さ15キロを震源として発生した地震で、アメリカ地質調査所によるとマグニチュード7.8と推定されている。
この地震によってネパールでは建物の倒壊、雪崩、土砂災害などにより甚大な被害が発生した。ネパールではレンガ積みの耐震性のない脆弱な構造の建築物が多く、首都のカトマンズでは地割れも発生し建物倒壊件数も多くなってしまった。カトマンズのダルバール広場もスワヤンブナート、ダラハラ塔なども修復不可能な損傷を受けた。バックパッカーの聖地としてカト
マンズ最大の客が集うタメル地区では、狭い路地にレストランや土産物屋などが軒を連ねていて道路幅も狭い為に救出活動が困難であり手作業での救出活動となっていたらしい。
 
映画の撮影隊はこの地震の前に撮影が終わり帰国していたとのことだが、この作中にある映画のカトマンズの景色は映像としては地震前、最後に残されたものであり、映画史の中でも希少なものになることは間違いない。
 
皆さんも是非、この映画を見て様々な感想を抱いて頂きたいし、人生とはなんなのか、考えて欲しい。ザイルパートナーの部分は、私としてはこの映画の一番の肝であると考えている。
登山家の人生、孤高な男の半生、山を通じた男同士の葛藤、カメラマンの野望、孤高な登山家に命を預けた純朴な青年、山屋の人生に巻き込まれた女性の悲哀が詰まった映画です。